★★最速会場レポ「ムンク展―共鳴する魂の叫び」(東京都美術館)

エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年?テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66cm

エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年?
テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66cm

展覧会みどころまとめ

展示数約100点、100%ムンク作品の展覧会

展示はオスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションを中心に、約60点の油彩画に版画などを加えた約100点。《叫び》をはじめ、人間の感情を生々しく描き出した代表作、迫力の風景画や等身大の肖像画、美しい版画に至るまで、多彩なムンク作品が東京に集結する100%ムンク作品の展覧会です。

テンペラ・油彩画の《叫び》(1910年?)が初来日

ムンクは、その画業において、「吸血鬼」、「マドンナ」、「接吻」をはじめとするモティーフを、素材や技法を変えながら繰り返し描きました。世界一有名な絵画というべき「叫び」も、じつは複数点描かれています。

世界中の誰もが知るムンクの代表作「叫び」は、版画以外に4点の作品が現存し、そのなかでも、本展に出品される、オスロ市立ムンク美術館が所蔵するテンペラ・油彩画の《叫び》は待望の初来日です。

手で両耳を塞ぎ、口を大きく開いて道に立ち尽くす中央の人物と、オスロ・フィヨルドの上に広がる鮮烈な日没。人間が内面に抱える不安や孤独などの感情が周囲の自然と共鳴しているかのようです。

画家の全容を紹介する大回顧展

本展では、巨匠・ムンクの愛と葛藤の人生を辿りながら、青年期に描いた家族や友人の肖像画、「接吻」や「吸血鬼」など画家が繰り返し取り組んだモティーフ、鮮やかな色彩が輝く晩年の風景画など、その60年に及ぶ画業が主題ごとに分かりやすく構成されます。

「ムンク展―共鳴する魂の叫び」10月27日より東京都美術館にて開催

展示は全9章より構成されています。

第1章 ムンクとは誰か?

エドヴァルド・ムンク《地獄の自画像》1903年油彩、カンヴァス 82×66cm

エドヴァルド・ムンク《地獄の自画像》1903年
油彩、カンヴァス 82×66cm

ムンクは、家族の死を経て画家を目指した青年期から、第二次世界大戦の戦禍のなかひとり生涯を終える直前まで、数多くの自画像を残しました。人生に暗い影が落ちるなかにあっても強い自尊心を感じさせる《地獄の自画像》や、飄々とした姿の老齢の自撮り写真 ─人生の節々にとらえられた多様なイメージは、今や世界中に知られる「叫び」の画家が表現した自らの人生と、その芸術の神髄を感じさせます。

第2章 家族と死

1863年、軍医だった厳格な父クリスチャンと母ラウラの長男として誕生したムンク。5歳の時、母が5人の子どもを残して結核により死去、9年後には一つ上の姉をも同じ病で失いました。その死を思わせる一連の作品「病める子」は自然主義的な表現からの脱却をみせる初期の代表作となりました。一方、因習の転倒や自由恋愛を標榜する故郷のボヘミアン・グループ、パリやベルリンで出会った世紀末を代表する作家たちの肖像も、画家ムンクが生きた時代を映し出します。

エドヴァルド・ムンク《病める子Ⅰ》1896年リトグラフ 43.2×57.1cm

エドヴァルド・ムンク《病める子Ⅰ》1896年
リトグラフ 43.2×57.1cm

「《病める子》は、新たな道を切りひらいた、私の芸術における、一つの突破口。そのあと描いた多くの絵の起源がそこにある。」 ─印刷物より(1928年)

第3章 夏の夜―孤独と憂鬱

エドヴァルド・ムンク《夏の夜、人魚》1893年油彩、カンヴァス 93×117cm

エドヴァルド・ムンク《夏の夜、人魚》1893年
油彩、カンヴァス 93×117cm

ムンクは欧州各地で展覧会を開催し、次第に国際的な評価を築くなか、オスロ・フィヨルドをのぞむ故郷で夏を過ごす生活を続けました。

《夏の夜、人魚》をはじめ、ノルウェーの短い夏の白夜、月光が映し出すフィヨルドが、原風景のように繰り返し作品に登場します。静かに寄せる波や湾曲した海岸線、海辺の丸石、空の雲などの自然の風景が、物思いに耽る人物の孤独な感情と呼応するかのように描き出されます。