一流ビジネスマンは縄文人に学ぶ 東博・縄文展から読み解く成功のヒント

縄文展チラシ

縄文が密かにブームの兆しと耳にします。東京国立博物館では特別展「縄文-1万年の美の鼓動」が現在開催中で、くすぶるブームの火種を大きく燃え上がらせそうな予感。縄文の美意識や暮らしぶりから学べること。また美術展を通して、ビジネスのヒントも探ってみましょう。

最近、『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』や『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』といった書籍が話題です。日本のビジネスエリートはぜひ我々のルーツであり、世界に誇れる「縄文文化」を身につけて渡り合いましょう!(会期は9月2日(日)まで)

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見どころ
会期中の7月31日(火)〜9月2日(日)の期間では、現在国宝指定されている縄文出土品6件すべてが全国から集結します。

特別展「縄文」

2018.08.26

縄文のブームは本当?

縄文が静かにブームの兆しを見せていると言います。耳にしたことはありますか? ブームと言っても、現状はごく一部の限られた範囲のような気がするのですが・・・。 しかし「土偶女子」と呼ばれる人たちも登場しています。ブームのカギは、いつの時代も女性が握るもの!?

縄文と言えばこれまで、考古学的にとらえられてきました。今回の展示はアートとしてとらえているのが特徴です。そしてブームの裏には、縄文をファッションやスピリチュアルという新たな側面からとらえる動きもあります。映画「縄文にハマる人々」も上映中です。

女性が動き出せば、御朱印ブームのようなブレイクの可能性はありそうです。「土偶帳」持参で全国を回り記念スタンプを押印。土偶には女性に受け入れられる「かわいい」の要素が十分あります。今や「かわいい」は世界に通用する価値感に成長しています。ストリート系の人たちには、ファッションとして「かっこいい」と捉えられているようです。

東京国立博物館で開催されている特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」から、同館考古室長 品川欣也氏のお話も交えて、縄文から私たちは何を受けとめ何を学べるのかを探ってみます。(品川室長は、「縄文」を流行語大賞にと狙っています。)

土器に見る縄文マインド

縄文の技術力の高さ

国宝 火焔型土器 新潟県十日町市 笹山遺跡出土 新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管)

国宝 火焔型土器 新潟県十日町市 笹山遺跡出土 新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管)

縄文の代名詞ともいえる国宝の《火焔型土器》です。360度、どこから見ても美しい装飾。「いつも、どこを正面にするか悩む」と展覧会を担当された 東京国立博物館 考古室長 品川欣也氏は語ります。

上から見ても正円のため方向性がありません。底部の円は、上部の円の中心にきっちりと納まっています。頭でっかちでバランスの悪い形なのに、どっしりと安定感を保っています。側面の文様は1周するとぴったりつながります。

これらは、作り手の技術力の高さを示しています、と品川氏。これだけデコラティブな装飾は、偶発的なものかと思っていました。展開図で確認すると繰り返しのパターンでデザインされています。構成案が頭の中にあり計画的に忠実に再現していたことがわかります。

空間認識能力と忍耐力を持つ縄文人

縄文人は、美的センスだけでなく空間認識能力も優れていたことを示しているのではないでしょうか? それは狩猟生活によって備わった本能、3次元的な空間認識が磨かれていた結果、火焔型土器という造形物が無意識のうちに現れてしまったのでは? 

この複雑な土器を、頭の中で図面を描き、それに基づき最後まで手を抜かずに作り上げてしまう忍耐力。我々の祖先は、そんな能力を獲得していたと言えます。縄文人の血が、自分の中に眠っているかもしれません。何かのきっかけで目を覚ますことがあるかも!

縄文人は決して万能ではない 苦手もあった

(左)動物形土製品 栃木県栃木市藤岡神社遺跡出土 栃木市教育委員会蔵(栃木県立博物館保管)(右)線刻礫 群馬みなかみ町 矢瀬遺跡出土 群馬・みなかみ町教育委員会蔵

(左)動物形土製品 栃木県栃木市藤岡神社遺跡出土 栃木市教育委員会蔵(栃木県立博物館保管)
(右)線刻礫 群馬みなかみ町 矢瀬遺跡出土 群馬・みなかみ町教育委員会蔵

右の石(線刻礫)をよく見ると線画が描かれています。人の姿をしていますが簡略的です。左は動物形土製品。線画は決して上手とは言えません。しかし特徴はとらえており、描くべきことはしっかりと描いていました。

これらから、描いた動物と自分たちの関係を表現していることが読み取れます。「猪よりも犬が大きい」という逆転現象は、自分たちと動物のかかわりの度合を示していると品川氏。

これ、日本画の表現にも通じると感じました。手前に大きく描く日本の遠近法。忠実に描くのではなく「何を描きたいのか」にスポットをあてます。無難にまとめるのではなく、何に注目しているのか、それを伝えることが大事。

「上手に描かなくていいんだよ。伝えたいことを伝えることが大事。表現の稚拙は関係ない!」そんな縄文人の声が聞こえたように思いました。

チャレンジングな展示からヒントをつかむ

第4章 縄文美の最たるもの 展示風景

第4章 縄文美の最たるもの 展示風景

赤は縄文時代の祈りの色。ならば背景に! ということでチャレンジ精神あふれるカラーを使った展示を実現。これが最初で最後になるかもしれません。燃えるような炎の色と企画者の思いにどっぷりつかって鑑賞すれば、何かメラメラと沸き立つものがあるかもしれません。

縄文人は輪が大好き 安定が文化を生む

第5章 祈りの美 祈りの形 展示風景

第5章 祈りの美 祈りの形 展示風景

次のエリアに入った瞬間、広がる開放感。ずっと向こうまで見通せる視界のよさと人の気配。広がりがあるのに、独立もしている。つかず離れずのよい距離感に心地よさを感じました。

これ、日本的な空間だと思いました。御簾や屏風の仕切は、独立性を持ちつつ、隣の気配も感じられます。完全に分離せずに緩くつながりを持つ。おそらく縄文社会の様子を表現しているのだと思いました。西洋の個室文化との違いは、縄文時代に発端があったのかも… 

品川氏の解説によると、縄文中期には大集落が作られました。家は丸く配置され、その中央には墓地や広場、祀りの場ができました。縄文人は輪が大好きなのだそう。展示の円はその環状集落を表現し、輪の中に祈りの美が展示されています。

このような社会は長期間営まれるようになり、縄文社会は豊かになり成熟したといいます。美術に触れて気づかされたのは、世の中が安定すると新しい文化が生まれ、飛躍的な発展を遂げるということでした。江戸時代しかり、中国の乾隆帝時代しかり。その源流を縄文時代に見ました。

メラメラ燃えている展示

炎に囲まれた展示風景(第5章 祈りの美 祈りの形)

炎に囲まれた展示風景(第5章 祈りの美 祈りの形)

円の周りは炎がメラメラ燃えています。火焔型土器のイメージでしょうか? 土器を焼くための火? 煮炊きの火? 4章の赤い演出から炎が飛び火したのでしょうか? この心憎い演出は金・土曜日の夜間開館時のみです。縦の柵は、縄文のロープでした。

輪の中心にそびえたつ石棒

第5章 祈りの美 祈りの形 展⽰⾵景

第5章 祈りの美 祈りの形 展⽰⾵景

集落の中央でスポットライトを浴びてそそり立っているのは石棒。中期はより大きくなり巨大化しました。これは男性を象徴する造形です。縄文社会の縮図がここにあるのだと思いました。集落の中央に石棒。男性が社会の中心を担っており、子孫繁栄の意味も持ちます。男尊女卑はここからスタートしていたのでは?と想像されました。

しかしそうではありませんでした。
 

圧倒的に多い女性の土偶

女性の土偶(第5章 祈りの美 祈りの形)

女性の土偶(第5章 祈りの美 祈りの形)

最古の土偶は、頭と手がなく、胸があって腰がくびれていました。最初に作られた土偶は手のひらサイズの女性でした。縄文社会は、前出のように男性中心なのかと思っていました。しかし胸とくびれを持つ女性の土偶が圧倒的に多かったのだそうです。男性を象徴するものはごくわずかでした。

土偶は妊娠した女性の姿で表現されました。

その後、手のひらサイズの土偶は次第に大きくなります。親指サイズから掌サイズに、これは2~3人で祈るときのサイズです。しかし社会が形成されると、より多くの人の祀りの対象になるには、大きさを変化させる必要があったと読み取れるそうです。

豊かな自然によってもたらされた縄文文化に学ぶ

狩猟文化は豊かな自然あってのもの

縄文時代の造形美は、狩猟文化によってもたらされました。農耕が始まると、土器の装飾はシンプルとなります。この傾向は日本だけでなく、中国、西アジアでも同じです。それは農耕をせずに狩猟で1万年もの間、生活できる豊かな自然の恵みがあったからこそと研究者たちは考えています。

縄文時代の文様は、豊かな自然からもたらされたもの。と考えると日本美術の自然と共に生きるというルーツは、縄文時代にあったと考えられるかもしれません。自然とともに生きながら、命をつなぐ。それには、命を宿し育む女性の土偶が圧倒的に多く祈りの対象となったことにもつながります。

縄文の文様は自然の造形を見る観察眼から?

展示風景

展示風景

生の《火焔型土器》に目にした瞬間、これは炎の姿だと私なりの確信がありました。縄文人は、今の私たちとは比べものならない鋭敏な五感を駆使して生活していたはずです。その中でも視覚は、一番の情報を得る感覚器だったはず。

観察眼が磨かれ、炎の本質をあぶりだし、そこに神聖で霊的なものを見ていたのではないでしょうか?縄文人が生きていくために一番重要であったと思われる視覚。そう思った時《遮光器土偶》の大きな目が何を意味するのかがわかりました。

あの目は宇宙人ではなく、目という感覚器を特別視していて、意識的に捉えていたことの現れ。縄文人の人体認識を表したものではないかと考えました。

重要文化財「遮光器土偶」青森県つがる市木造亀ヶ岡出土 東京国立博物館蔵

重要文化財「遮光器土偶」青森県つがる市木造亀ヶ岡出土 東京国立博物館蔵

縄文のしぐさを読み解いて想像力を鍛える

品川氏は語ります。「縄文人のしぐさにメッセージが込められているのですが、まだ考古学者も読み解けていません。ぜひみなさんも考えて読み解いてみて下さい」状況を考慮しながら想像力を駆使して考えてみる。そうした繰り返しがビジネスに生かせる想像力につながっていくのだと思います。なりきることで相手の立場になって考えることにもつながります。

縄文という時代をいかにとらえるか。そしてその時代の人たちのマインドをつかむか。さらにそれを今の時代に伝えようとする企画者たちの熱いマインドを受け止める。それらは祈りの赤、炎の赤、魂の赤として熱い熱量を持って届いてきました。その中からビジネスにつながるヒントも得られるのではないでしょうか?

特別「縄文-1万年の美の鼓動」

項目 内容
展覧会名 特別展「縄文―1万年の美の鼓動」
会場 東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)
会期 2018年7月3日(火)〜9月2日(日)
開館時間 午前9時30分から午後5時
※金曜・土曜は午後9時まで
日曜日および7月16日(月・祝)は午後6時まで
入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、7月17日(火曜日)
ただし7月16日(月・祝)、8月13日(月)は開館
展覧会公式サイト http://jomon-kodo.jp/

観覧料

観覧料(税込) 当日券 団体券
一般 1,600円 1,300円
大学生 1,200円 900円
高校生 900円 600円
中学生以下無料・ 団体は20名以上・障がい者とその介護者1名は無料(障がい手帳等要提示)