仏像を見るポイント 特別展「仏像の姿~ 微笑む・飾る・踊る~」三井記念美術館

「不動明王立像」鎌倉時代 個人蔵

「不動明王立像」鎌倉時代 個人蔵

※この記事の写真は、主催者の許可を得て撮影したものです。

特別展「仏像の姿~ 微笑む・飾る・踊る~」三井記念美術館

三菱記念美術館では、特別展「仏像の姿~ 微笑む・飾る・踊る~」が2018年9月15日(土)~2018年11月25日(日)まで開催されます。仏像鑑賞がブームになってかれこれ10年ほど。しかし美術鑑賞の初心者にとっては、仏像はどれも同じように見えてしまいます。そこで、どこをどう見たらよいのか探ってみましょう。

場所は三井記念美術館。歴史ある三井家のお宝を収蔵している格式高い美術館という印象や、立地も三井本館の7階。ちょっと立ち寄るには、躊躇してしまうかもしれません。さらに今回のテーマは仏像。近づきにくさを感じてしまいます。仏像鑑賞の初心者でも分かりやすい見方のポイントを探ってみましょう。

開催概要

項目 内容
展覧会名 特別展「仏像の姿~微笑む・飾る・踊る~」
会場 三井記念美術館
会期 2018年9月15日(土)~11月25日(日)
開館時間 10:00~17:00
入館は16:30まで
休館日 月曜日、9月18日(火)、9月25日(火)、10月9日(火)
ただし9月17日(月・祝)、9月24日)(月・振休)、10月8日(月・祝)は開館
主催 三井記念美術館、朝日新聞社
後援 國華社、東京藝術大学
特別協力 東京藝術大学文化財保存学(彫刻)
HP http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)

初心者でもわかりやすい仏像を見るポイント

「仏師がアーティストになる瞬間」 キャッチが秀逸と言われても…

今回の仏像の展示は、制作をした作者「仏師」にスポットをあてています。いかに独創的で豊かな感性と高度な技術で作られているかに着目し、「仏師がアーティストになる瞬間」というキャッチで、制作者側の目線で見ています。これまでになかったアプローチの企画です。

しかも、誰もが知っている運慶や快慶といったメジャー級でない仏像をこれだけ集めた展覧会は珍しい!と今回コラボ協力された藝大の薮内佐斗司教授は、キャッチとともに大絶賛。仏像愛好者にとっては、これまであまり見る機会のない仏像にお目にかかれ、話題の展覧会になりそうです。

初心者は仏像をどう見ればいいの?

今までにない注目の展覧会のようです。しかし、初心者にとっては、その価値がよくわかりません。そこで次の点に注目をして鑑賞してみてはいかがでしょうか?

仏像っていろんなタイプがあるんだ・・・・ということに気づいてもらうのが目的だといいます。「仏師がアーティストになる瞬間」を理解するために、3つのポイントが用意されています。それは「顔」「装飾」「動きとポーズ」です。

この3つの着目点を、「仏像鑑賞の初心者が見るべき3つのポイント」として置き換えると、とても分かりやすくなります。今後、仏像を見る時にも役立ちそうです。

初心者が仏像を見る時の3つのポイント

ポイント1「顔」

仏像の表情は、やさしい顔、慈愛に満ちた顔があります。一方、怖い顔、怒った顔もあります。しかしその顔も一様ではなく、やさしさの中に笑みやかわいらしさがあり、同じ怖い表情でも、威厳を表しているものもあれば、怒りや威嚇の怖さもあります。

一見、同じような表情の奥に、別の隠された意図を込められているようです。それが仏師の表す仏の本質と個性。最初はそこまでわからなくても、仏像はどんな表情をしているかしら?そんな気軽な感じで見ていきましょう。サブタイトルの「~ 微笑む・飾る・踊る~」の「微笑む」は「顔」を意味しています。

2つの仏像は同じように微笑んでいます。でも微妙に違うように見えます。

重文 菩薩坐像 2軀 平安時代・9世紀 岐阜・臨川寺

重文 菩薩坐像 平安時代 岐阜・臨川寺

ポイント2「装飾」

仏像はどんなものを身に着けているのでしょうか。どんな色をしていたのでしょう。かつてはどんな輝きを持っていたのでしょうか?あるいは、着ているものの襞(衣文)も美しく彫られています。その数の多さや繊細さなどにも注目してみます。それらの装飾から、華麗、荘厳さが伝わってきます。

「装飾」いろんな装飾品を身につけています。写真や解説のキャプションをたよりに鑑賞しましょう

「装飾」いろんな装飾品を身につけています

ポイント3「動きとポーズ」

体が傾いていたり、踏みしめたり、踏ん張ったり、片足でバランスをとったり、踊ったり、走ったり。実にいろいろな動きやポーズをとっていて、思わず吹き出しそうになる仏像もあります。サブタイトルの「~ 微笑む・飾る・踊る~」の「踊る」がこの部分になります。

「動きとポーズ」体のひねりや重心のかけかた、手足の上げ下ろしのポーズなど見ていてあきません。このコーナーは寄木造りの一角。寄木だからこんな複雑な動きも形にできます。

「動きとポーズ」体のひねりや重心のかけかたなどのポーズに注目

このコーナーは寄木造りの一角。寄木だからこんな複雑な動きも形にすることができるわけですね。

わかりやすいナビゲーション

簡潔な一行解説が理解を助ける

仏像の横に解説があります。しかしこれを読んでも難しくてわからないことばかり。でも安心です。

一番最後の行を見て下さい。(見どころ)と書かれた緑の一行があります。ポイントが一言であらわされているので、最初はここだけを見ていくのもいいでしょう。

(左)毘沙門天立像 1軀 鎌倉時代・13世紀 個人蔵 (右)部分

(左)毘沙門天立像 鎌倉時代 個人蔵 (右)部分

毘沙門天。確かににらみを効かせています。その目は玉眼とあります。こういうガラス玉のような目を玉眼というのでしょうか?何でできているのかな?毘沙門天はよく耳にする仏像です。どんな仏様なのでしょう。ちょっと興味がわいてきました。このあとに、何体も毘沙門天がまとまって展示されていました。

詳しく知りたいと思ったら

「天部の姿」というコーナーに、毘沙門天が何体も展示されています。この解説を見ると、毘沙門天にはどんな特徴があって、どこを見ればよいのか理解できます。

毘沙門天

  • 甲冑をつけ、武器を持っている
  • 左右の足の位置と体重の移動に注目。腰の捻りに連動している
  • 顔の向き、両肩の前後の向き、腕の構えで全体のバランスをとっている。
  • これは仏法を守る守護のポーズ。
  • 忿怒相の顔、腹や胸につけた魔除け獅噛にも注目

またどこかで、毘沙門天と出会ったら、こんなところを注目して見ていきましょう。

添えられた写真に注目

毘沙門天はお腹のあたりに、ベルトのような縄とバックルのようなものがあります。獅子が縄を噛んでおり、これは魔除けの役割をしているそう。獅噛(しかみ)といいます。たいていは腰にあるのですが、胸や足の膝下にある例外もあるようです。

(写真左)天部立像 個人蔵 (写真右上)胸につけた獣面 (写真右下)膝頭のあたりにも獣面

(写真左)天部立像 個人蔵 (写真右上)胸につけた獣面 (写真右下)膝頭のあたりにも獣面

仏像の展示の横に写真が添えられています。重要なポイントが写真で示されています。

膝頭の獣面のアップの写真。このような例は他にない珍しいものだそう。

膝頭の獣面のアップ写真。これは珍しい例

解説を読んで、無理に理解しようとしなくても、写真を見ているだけで、重要なポイントを自然につかんでいくことができます。

知っているキーワードの「写真」と「見どころ」そしてパネルや展示も参考に

知っているキーワードや気になる部分を中心に、写真や一行解説を見るだけでOKです。もう少し詳しく知りたいと思ったら、パネルを見たり、用語解説した展示も参考に。そんな軽い感じで鑑賞すれば、むずかしそうな仏像も面白くなってきます。

「截金について」 截金(きりがね)という言葉が頻繁に登場。気になったらこの展示を参考に

ユニークな仏像を紹介

以上のようなことを踏まえて、私が着目した面白ポイントを紹介します。

おなじみ雷神立像

誰もが知っている風神雷神の雷神像。両手に撥(バチ)を握り、風に髪をなびかせ背を丸めて雲に乗っています。しかしトレードマークの雷太鼓は背負っていません。仏師目線で見ると、彫るのが難しかったのかな?と思いながら見ていました。

雷神立像 一軀 寄木造 玉眼 南北朝時代・14世紀 公益財団法人 小田原文化財団

雷神立像 寄木造 玉眼 南北朝時代 公益財団法人 小田原文化財団

すごい形相です。目が合う位置を見つけて合わせてみましょう。ギザギザ眉に大きく見開いた目。ここにも玉眼が入っています。何を見ているのでしょう。口も精巧です。大きく開けた歯は一つ一つ丁寧に彫られています。口の中に舌までありました。もっと近寄ってみましょう。

(左)雷神立像 公益財団法人 小田原文化財団 (右)部分

(左)雷神立像 公益財団法人 小田原文化財団 (右)部分

力強く前に踏み出す右足の筋肉の盛り上がり。虎の革でできていると言われる腰回り。躍動感あふれる彫刻です。

雷神立像 公益財団法人 小田原文化財団 部分

雷神立像 公益財団法人 小田原文化財団 部分

一木造りの仏像とわかると見え方も変わる

一本の木から彫られた仏像もあります。それを知っているのと知らないのとでは、作品の見え方も全く違ってきます。仏像の装飾を含む全てが、一本の木から彫られたと考えるだけで気が遠くなりそうです。必然的に仏師の技術に思いをはせることになります。

(左)観音菩薩像 1軀 平安時代 10~11世紀 大阪・本山寺(中央)観音菩薩立像 1軀 平安時代 9世紀 個人蔵(右)十一面観音立像 1軀 平安時代 9世紀 大阪・長圓寺

(左)観音菩薩像 平安時代 大阪・本山寺
(中央)観音菩薩立像 平安時代 個人蔵
(右)十一面観音立像 平安時代 大阪・長圓寺

そして、下図の「五大明王像」も1本の木から掘り出されたというのです。細かな作りもさることながら、一本の足で立つこのバランスの妙。倒れやしないかとドキドキしてしまいます。

ミケランジェロは、大理石を彫る前からその姿が見えていたと言います。これを見たら、日本の仏師も、仏様の姿が見えていたとしか思えません。

「五大明王像」平安時代 奈良国立博物館 軍茶利明王

「五大明王像」平安時代 奈良国立博物館 軍茶利明王

「いろんな仏像があるのね」からスタート 自分の感覚で面白がればいい

仏像鑑賞というと難しく考えがちです。まずは仏像の種類を把握しましょうとよく言われます。しかしそんなことは抜きにして、見て感じたままでいいというのは、目からウロコでした。こんな顔してるぞ~ 優しそうねぇ。怖いなぁ…こんなポーズもするんだ。見て感じとればいいことに気づかせてくれる展示構成です。

見ているうちに、仏師はこんなところに苦労したのでは?こんなこと考えながら作ったのかな?そんなことが見えてきたら、それは「仏師がアーティストになる瞬間」を、あなた自身がとらえた瞬間でもあります。

鑑賞者する人が「自由に自分の感性で見る」という体験型の展示です。写真だけでは絶対にわからないことが一杯。ぜひ驚きの技術や美しさ、笑いを誘う仏像の姿を生で体験してみて下さい。

(以上の記事は、ライター個人の意見となります。)

開催概要

項目 内容
展覧会名 特別展「仏像の姿~微笑む・飾る・踊る~」
会場 三井記念美術館
会期 2018年9月15日(土)~11月25日(日)
開館時間 10:00~17:00
入館は16:30まで
休館日 月曜日、9月18日(火)、9月25日(火)、10月9日(火)
ただし9月17日(月・祝)、9月24日)(月・振休)、10月8日(月・祝)は開館
主催 三井記念美術館、朝日新聞社
後援 國華社、東京藝術大学
特別協力 東京藝術大学文化財保存学(彫刻)
HP http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)

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コロコロ

ライター:

ライター 美術ってわかりにくい・・・ 他ジャンルのライター経験を生かして、自分の体験をもとに、どんなポイントをつかむと理解の糸口になるのか、記事にしたいと思っています。 WebSite